SNSの「ハードル設定」で客層は決まる|バズ狙いがブランドを壊す理由
「SNS運用代行を入れたら、なんか軽いノリの発信になってしまった」
「バズった。フォロワーも増えた。でも、来るお客さんが変わった気がする」
この2つは、別々の相談のように見えて、原因は同じところにあります。発信の「高さ」を決めないまま、SNSを始めてしまったことです。
この記事を書いているのは、株式会社8fectの渡邊です。二輪部品商で3年、輸入車専門の販売店で5年、売る側の現場でSNS運用と映像制作を担当し、いまは中古車販売店などの車屋さん・バイク屋さん専門の運用代行として累計40社以上を支援しています。講演でも必ず話しているのがこの「ハードル設定」の考え方で、他の運用会社があまり言わないぶん、いちばん8fectらしい部分だと思っています。
結論:発信のハードルの高さが、来る客層を決める
先に結論です。SNSの発信には「高さ」があって、それが低すぎても高すぎても、来てほしいお客様には届きません。
| ハードル | やっていること | その結果 |
|---|---|---|
| 低すぎる | 流行りの音楽に合わせて踊る/とにかく面白い投稿をする/バズ狙いでネタに走る | 客層が下がる・ブランドが崩れる |
| ちょうどいい | 専門知識をわかりやすく届ける/自分たちの個性・こだわりを見せる/お客様の不安を動画で解消する | 「この店に行きたい」と思われる |
| 高すぎる | 発信しない/情報が少ない/SNSを軽視している | 「敷居が高そう」と思われ、潜在顧客に届かない |
多くのお店は「高すぎる」からSNSを始めて、伸ばそうとするうちに「低すぎる」まで一気に落ちます。真ん中で止まれない。これが、投稿は頑張っているのに売上につながらない会社に共通して起きていることです。
こんな経験、ありませんか
- 投稿は頑張っている。でも来店が増えない
- フォロワーは増えた。でも「買う気がない人」ばかり来る
- 流行りのショート動画をやってみた。再生は取れた。でも問い合わせゼロ
- SNS運用代行を入れたら、軽いノリの発信になってしまった
4つとも、ハードルが「低すぎる」側に落ちたときに起きる症状です。バズった時に起きるのは、再生数の爆増、フォロワーの増加、コメントの増加。そして問い合わせゼロ。理由は単純で、バズった層と「買い手」が違うからです。面白さで集めた人は、面白さに反応しただけで、クルマを買う人ではありません。
「ハードル」とは何か
ここで言うハードルは、発信の難しさのことではありません。「誰に向けて話しているか」の高さです。
低すぎる発信:誰でも見られる代わりに、誰の店でもなくなる
流行りの音源で踊る、ネタに走る、とにかく笑いを取りにいく。これは「誰でも見られる」発信です。だから伸びます。ただし、見た人の頭に残るのは「面白い動画の店」であって、「◯◯に詳しい店」ではありません。
踊る動画を出した瞬間に、来る客が変わる。これは誇張ではなく、実際に何度も見てきたことです。来店はするけれど冷やかしで終わる、値引きの話しかしない、他店で買ったあとに整備の金額だけ聞かれる。お店の格をSNSで自分から下げてしまっている状態です。
高すぎる発信:こだわりはあるのに、届く前に終わっている
逆に、専門店ほど「うちはSNSでふざけたくない」と言って、発信そのものを止めてしまうことがあります。あるいは、たまに投稿しても専門用語だらけで、業界の外の人には何の店か分からない。
これはブランドを守っているように見えて、実際は「敷居が高そうな店」として、潜在顧客の検討の土俵にすら上がれていません。お客様は来店前にSNSを見て、ほぼ決めた状態で来店します。そこに情報がなければ、こだわりは誰にも届きません。
ちょうどいい発信:専門性を、外の人に分かる言葉で
真ん中は、専門知識をわかりやすく届けること、自分たちの個性やこだわりを見せること、そしてお客様が来店前に不安に思っていることを動画で解消することです。
面白くする必要はありません。ただし、難しくしてもいけません。「この店、ちゃんとしてる。しかも話しやすそう」と思われる高さ。ここで止まれると、見た人がそのまま「この店に行きたい」に変わります。
なぜ「低すぎる」側に落ちやすいのか
ほとんどの会社が真ん中で止まれず低い側に落ちるのには、構造的な理由があります。
- 低い発信のほうが、数字が早く出る。再生数もフォロワーも、面白い動画のほうが確実に伸びます。数字が出ると、もっと出したくなります
- 運用代行の評価が再生数になっている。運用会社が再生数で評価される契約だと、運用会社は再生数が出る方向に企画を寄せます。「軽いノリになった」「内容が薄い」の正体はここです
- 店側が「伸びている=うまくいっている」と誤解する。再生数が伸びているときに「これ、うちの客じゃない」とブレーキを踏める人は少ないです
だから、ハードルは伸びてから考えるのではなく、始める前に決めておく必要があります。走り出してから上げるのは、下げるより何倍も難しいからです。
流行りのフォーマットに乗るべきか、目的で決める
「じゃあ流行りには一切乗るなということか」と聞かれますが、そうではありません。目的によって答えが変わります。
| 目的 | 流行りに乗ること | 判断の基準 |
|---|---|---|
| 有名になりたい・認知を広げたい | 積極的に乗っていい | バズが目的に直結する |
| 高単価・コアな顧客を集めたい | 選んで使う | 自店のブランドとのマッチを確認してから |
| 客層を上げたい | 乗りすぎると逆効果 | 自店のイメージを最優先にする |
「有名になりたいだけ」なら、流行りに乗るのが正解です。でも「売上を上げたい」なら、設計が要ります。自分の店がどの行にいるのかを先に決めてから、フォーマットを選んでください。
高単価の店ほど、ハードルは高めに置く
輸入車専門店にいた頃に痛感したのは、扱う車両の単価が上がるほど、発信の高さの影響が大きくなるということです。数百万円を出すお客様は、お店の発信をかなり見ています。そこで軽い投稿が並んでいると、「この店に数百万円を預けていいのか」という不安が先に立ちます。逆に、単価が低めで来店頻度の高い商売なら、多少ハードルを下げて間口を広げるほうが合うこともあります。正解の高さは店によって違う。だからテンプレートで運用しても合わないのです。
自店の高さを決める3つの問い
ハードルの高さは、次の3つに答えると自然に決まります。講演でもワークとしてやってもらっている問いです。
- あなたのお店が得意なこと・専門にしていることは何ですか?(輸入車、旧車、バイク整備、4WDカスタム、特定車種専門など)
- お店に来てほしい理想のお客さん像を一言で書いてください(30〜40代、クルマが好きで多少お金を出せる人など)
- そのお客さんが、来店前に不安に思っていることは何ですか?(輸入車は維持費が高いのでは、ちゃんとした店か不安など)
Q2の答えが、発信の高さです。その人が「この店、いいな」と思う投稿が、ちょうどいいハードルになります。そしてQ3の答えが、そのまま動画のテーマになります。企画の作り方は車屋のYouTube企画で詳しく書いています。
ハードルが合っているかを確かめる方法
再生数では判断できません。見るべきは、来る人が変わったかどうかです。
- 問い合わせの内容:価格の話だけか、「動画で言っていたあの点について」と具体的に来るか
- コメントの質:「草」「www」が並ぶか、質問や相談が来るか
- 来店したときの状態:ゼロから説明が要るか、ほぼ決めた状態で来るか
設計ができている支援先では、YouTubeを見て来店されたお客様について来店後の商談時間が約50%短くなり、月間の平均販売台数が200%を超えた例もあります(8fect調べ/一部の支援先での実績・YouTube視聴経由の来店客についての数値)。これは再生数が多かったからではなく、ハードルが合っていて、来店前に「この店で買っていい」がほぼ決まっていたからです。
よくある質問
Q. 面白い動画は全部ダメということですか?
A. 違います。専門性の中にある面白さは、むしろ強い武器です。「この人、こんなところまで見てるのか」という驚きは、ハードルを下げずに人を引きつけます。ダメなのは、専門性と関係ない面白さで数字を取りにいくことです。
Q. まず認知を取るために、最初だけバズを狙うのはありですか?
A. おすすめしません。最初に集まった層が、そのアカウントの「客層」になります。あとから高さを上げると、その層は離れ、新しい層はまだ来ていない、という空白の時期が必ず生まれます。最初から真ん中の高さで始めたほうが、結果的に早いです。
Q. すでに客層がずれてしまった場合、戻せますか?
A. 戻せますが、時間がかかります。やることは、投稿の高さを真ん中に戻し、しばらく数字が落ちるのを受け入れることです。ここで数字の落ち込みに耐えられず、またハードルの低い投稿に戻る会社が多い。判断は再生数ではなく、問い合わせの質で見てください。
まとめ
- SNSの発信には「ハードルの高さ」があり、低すぎれば客層が下がり、高すぎれば届かない
- 多くの店は「高すぎる」から始めて、伸ばそうとして「低すぎる」まで一気に落ちる。真ん中で止まる設計が要る
- 低い側に落ちるのは、数字が早く出るから、運用代行が再生数で評価されているから。ハードルは始める前に決める
- 流行りに乗るかは目的で決める。有名になりたいなら乗る、売上を上げたいなら設計する
- 合っているかは再生数ではなく、問い合わせの内容・コメントの質・来店時の状態で確かめる
まずは直近10投稿を見て、それを「来てほしいお客様」が見たらどう思うかを想像してみてください。その人が「この店、いいな」と思えない投稿があれば、それがハードルを下げている1本です。
そもそも車屋にSNSが必要な理由は車屋にSNS運用が必要な4つの理由に、Instagramでの具体的な投稿設計は車屋がInstagramで集客するにはにまとめています。
車屋・バイク屋専門のSNS運用代行・映像制作なら8fect
株式会社8fectは、車屋さん・バイク屋さん・関連事業者に特化したYouTube・Instagram運用代行と映像制作を行っています。元二輪部品商・元輸入車専門店スタッフとして10年以上現場にいた代表が、「バズ」ではなく、自店に合ったハードルの設計から一緒に考えます。
「うちの発信は高すぎるのか、低すぎるのか」を見てほしい、というご相談も歓迎です。実績・サービス内容・料金は公式LINEからご確認いただけます。
この記事を書いた人
渡邊 大地(わたなべ だいち)/株式会社8fect 代表取締役

二輪部品商で3年、輸入車専門販売店で5年。EC立ち上げ、SNS運用、映像制作を売る側の現場で担当してきました。2026年1月に独立し、いまは中古車販売店などの車屋さん・バイク屋さんだけに特化して、YouTube・Instagramの運用代行と映像制作をしています(累計40社以上を支援)
大阪自動車青年会議所、近青協情報委員会、滋賀自動車整備振興会などで、車屋・バイク屋向けのSNS運用について講師を務めています。大阪府在住。
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